定跡

寄り添いと櫓:最初の2手と、打ち込みの受け方

kairo・2026年11月1日

初手でいちばん指されている「寄り添い」は、端の石を斜め前に1つ寄せるだけの地味な手です。それでもAIで読むと、白が正しく返せる手はほとんどありません。この記事では、寄り添いが強い理由と、そこから組める「櫓」、そして櫓のただ1つの崩し方を見ていきます。

一番弱い石を働かせる

最初の配置で、隅の石(黒なら 1f と 6f)は隣が1つだけなので、数字は1です。1マスしか動けない、一番弱い石です。

寄り添いは、この隅の石を仲間の隣の 2e へ寄せる手です。

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寄り添い(1f→2e)。2e は数字2、隣の 3f も2から3に上がった

動かした 2e は数字2になり、隣の 3f も2から3に上がりました。黒の6つの石の数字を全部足すと、最初の配置では10、寄り添いのあとは12です。初手の7つの型のうち、合計が増えるのは寄り添いだけです。

反対に、前へ飛び出す手はどうでしょう。渡り鳥(2f→4d)も正面突破(3f→3d)も、合計は6まで下がります。飛んだ石がぼっちに近くなり、残された石も隣が減るからです。寄り添いは、前に進まずに、跳ぶ力をためる手だと言えます。

白はほとんど正しく返せない

寄り添いに対して、白の手は14通りあります。最強AIで全部読むと、互角を保てるのは反対側の隅で同じように寄せる 6a→5b(肩寄せ)だけでした。同じ側の肩寄せ 1a→2b はわずかに黒よし。残りの12通りは、黒がはっきり良くなります。

白から見ると、中央に石を出したくなる局面です。けれど、攻めた手ほど黒の厚い形にぶつかります。実戦で寄り添いがよく勝つのは、相手がここで間違えやすいからです。

迷ったら、もう一方の端も寄せる

黒の2手目で、白の14通りそれぞれに別の正解を覚えるのは大変です。そこで、2手目は右の隅も寄せる、と決めてしまう方法があります。6f→5e です。

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黒が左右の端を両方寄せた形(双璧)

古いAIの評価では、この手は白のどの手に対しても損が20点ほどに収まり、白が攻めてきた場合は黒の大きなリードがそのまま残りました。

追記:その後、新しいAI同士で数千局指させたところ、白が肩寄せで返した局面では、この形の黒の勝率は4割前後にとどまりました。肩寄せ以外には9割勝つ強い形ですが、肩寄せには別の手のほうが勝ちやすいことがわかっています。くわしくは双璧の記事にまとめました。

櫓を組む

寄り添いのあと、黒は 2e・3e・2f・3f の四角い塊を作れます。これが櫓です。4つの石が互いに隣同士なので、どの石も数字が3〜4に保たれ、遠くまで跳べます。仲間が跳ぶときの足場にもなります。

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青い枠の4つが櫓。どの石も数字が3〜4

櫓は最短3手で組めます。最短の組み方6通りのうち5通りは寄り添いから始まります。そして白の石は a の段にいるので、黒が組み終わるまでの2手のあいだに、黒の陣地まで届きません。白は櫓を止められないのです。

打ち込まれたら、隣に置かない

ただし、白には嫌な手があります。打ち込みです。下の図では、白が 3a から 3d へ一気に跳び込んで、櫓を組む場所の真ん前に石を置きました。

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白の打ち込み(3a→3d)。3d の白は隣が 2e だけなので数字1

3d の白は、今は隣が 2e だけなので数字1です。ここで黒が櫓を完成させようと 5e→3e と指すと、どうなるでしょうか。

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5e→3e は失敗。3d の数字が2に上がり、白は 1f へ跳び込める

3e が 3d の隣に来たことで、3d の数字が2に増えます。数字2の石は斜めに2マス跳べるので、行き先は 1f。寄り添いで空けた黒の隅、白にとっての向こう岸です。白が1つ着いてしまいます。AIの評価はマイナス16でした。

この局面で黒の手は13通りあります。そのうち、3d の隣に石を置く6通りは、どれも 3d を数字2にして 1f への跳び込みを許してしまいます。

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正解は 4f→1f。空いた隅を先に自分で埋める(評価プラス6)

正解は 4f→1f です。空いた隅を先に自分で埋めてしまいます。4f は隣が 3f・5f・5e の3つなので数字3、横に3マス動いて 1f に入れます。櫓の完成は、そのあとでも間に合います。

打ち込まれたときのルール
  1. 打ち込んだ石の隣に置かない(相手の数字を上げない)
  2. 寄り添いで空いた隅を、先に埋める

数字を変えて止めてくる手

白が反対側の肩寄せ(6a→5b)で返したあとにも、打ち込みはあります。黒が両方の端を寄せたところで、白が 4a から 4d へ跳び込む手です。

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白の 4d が 5e の隣に来て、5e の数字が2から3に

4d の白が 5e の隣に来たことで、5e の数字が2から3に変わりました。数字3では、5e から 3e へは入れません。白は、黒の石の数字を変えることで櫓を止めに来ているのです。相手の石が近くに来たら、まず自分の石の数字が変わっていないかを確かめてください。

まとめ

この記事は、YouTube「bocch定跡研究」第21回の内容を読みものにまとめ直したものです。評価は「最強」AIの読みによるもので、最後まで解き切った値ではありません。

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